Nov 27, 2006
第一宇宙速度まであと何マイル(続き)
結局、この80年代という時代に生まれて興隆した(原作はもっと古いけど)この種の作品の持っているナルシシズム、というのは
取りも直さず欲望(希望といいかえてもいい)を未来に向かって
投げる物語だったと言っていいんではないだろうか、と思う。
あの、今回の主要人物3人が野球に興じるというシーケンスは
何も偶然挿し込まれた場面ではなかったんじゃないだろうか。
高橋源一郎が「優雅で感傷的な日本のプロ野球」というとき、
そこには何某か根源的な未来への欲求があるんだろう。
本筋からは若干逸れるが、彼の描く『日本文学盛衰史』において、
文人が未成年の女の子にどっぷりと浸かる様というのは、
そうした欲望の方向性を如実に現わしてるのではないだろうか。
翻って、この80年代から地続きの、
物語性を意識的に押し出したこの作品の中で
ボールを投げ合う子たちの姿というのは
「未来へ向けて」というテーマと、
恐いぐらいに重なり合う、という気がしてなりません。
というお話。
6本しかないフィルムが日本を行脚した
なんてのがいつかの夏の日に
思い出されたらいいな。