ヌスバウムとアガンベンの両氏を招いた講演会[44]は「いま」、この種のものとしては異例なほど興味深く聞かれ「つつある」。 その理由の一つとして、異なる言語を話す人びとにたいして明晰に語ろうとする、お二人の英語の発話にたいする姿勢にある(ただしお二方とも英米圏以外の生まれである)とでも書けばそれは、これが内容以前の、あまりに初歩的な報告――いかに「速」報であるとしても――であることをただちに予感させるだろうが、会場のなかで書かれアップされる不謹慎きわまるこの書き込みが、もとより充実した内容の批判的紹介するものでないことは、最初から吐露しておいていい。 それにしても、いまここでぼくがこの不謹慎な速報性をもって――つまりこの場所にいるいかなる聴衆とも意見を交換する以前に――書かねばならないのは、ともに興味深いなかでも2番手の、アガンベン氏の「内戦と民主主義」のほうがなお面白いということなのである。 たとえば、「[…]スターシス[内戦]が同化を生じさせ、兄弟と外敵、オイコスとポリス、内部と外部とを区別不可能にする[…]。スターシスにおいてはもっとも近しい者の殺害はもっとも遠い者の殺害と等価のものとなる」(ほんの2分ほど前に通り過ぎた講演原稿の日本語訳より)といった、スリリングな論理の構築的進行は、もちろんこのように不謹慎にもキィを叩く者に十分に理解されているわけではないが、直観的な共感を瞬間瞬間に与え、また講演後に原稿を味読することで得られる喜びをすでにして予感させる。 重要であるとともに至極当然であること(女性の権利)を語る女性・ヌスバウム氏(女性)のそれよりも、男性・アガンベン氏の内戦にかんする議論のほうが、少なくとも「いま」興味深く聞かれていることが、私が男であることの、これじたいジェンダー的な問題に由来するのではないことを、祈る。 あっ、いまアガンベン氏の講演が終わりました。 |
モダニスト
2001/12/18火12:02 [45] |