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虹(よろず)






 青い人と赤い人。

「夢を見たよ。泣きたくなるような夢だった」
「どんな夢だったのだ?」
「虹の夢だった。空を見上げれば青いはずで、雨上がりなのに爽やかに晴れ渡って、そこには大きな虹が七色に輝いている、はずだった」
「はず?」
「うん、でもその夢には色が無かった。色の無い夢など在り来たりかもしれないけれど、なんだかとても寂しかった」
「そうか」
「だからかな、目覚めておまえの鮮やかな騎士服の青を見たとき、とても嬉しかったよ」
「そうか」
「ああ」





 1さんと5くんと2さん。

「あ、虹ですよ」
「おう、でっけぇな」
「虹など久しぶりに見たな」
「虹は直ぐ消えちゃいますもんね。でも、雨すぐに止んでよかったな。ほら晴れてきたから桜の花びらも散らずに済んで、きらきらしてますよ」
「おう、なんか綺麗だなぁ!」
「桜か……もう春か」
「そですよー。それでね、材料仕入れて道明寺餅作ったんですよ! 美味しいお茶も淹れますから帰ったら食べましょうね」
「おー美味そうだな。俺のは?」
「餅か、楽しみだな」
「もちろん、たくさん作ってますからどうぞ来て下さい。この後、お二人とも午後はお休みでしょ?」
「目に鮮やか、香りに鮮やか、耳に鮮やかってな。おまえといると世界が賑やかだわ」
「そうだな」
「俺もです。俺一人だけじゃ、こんなに楽しい気分になれませんよ。さ、いきましょういきましょう」





 銀髪の人と黒髪のヅラじゃない人。

「貴様、それは何杯目だ」
「さあな。好きなだけ食えっつたのはおまえだろ、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。確かにそう言ったが、まさか七種類全て制覇するつもりか貴様」
「春のレインボーパフェフェアー。食いたかった食いたかった。ありがとうねヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。俺は貴様が俺の話を聞くと言うから」
「聞いてるじゃん、ほら話してくれて良いよ、好きなだけ。あ、すいまっせーん、ストロベリーパフェくださーい」
「人の話を聞けい!」
「あ、七つ全部食ったら帰るからね俺。それまでに話済ませてね」
「……なにぃ!」





 名を返す少年と煌いている俳優。

「あ」
「どうした」
「虹……ですけど、あれは、虹なんでしょうか」
「雨なんて降ったっけね」
「降ってない、です」
「だよねぇ」
「じゃあ、あれは」
「虹に見える何かだろうね」
「……やっぱり」
「面倒なものだねぇ、お互い」
「……でも、とても綺麗だな……。あれ、俺たちにしか見えないんですね」
「――――」
「どうかしましたか?」
「いや、なんだかね。妙に気恥ずかしい気分になったというか」
「え?」
「そうだね、私たちにしかアレは見えないんだねぇ」
「あ、でもあいつも少しは見えるのかな」
「あいつ?」
「同級生で、少しだけ見える奴が居て」
「…………」
「どうかしましたか?」
「いや、なんだかね……少し残念な気分になったというか」
「え?」
「まぁいいさ。ああほら、消えてしまう」
「儚い、ですね」
「そうだね」
「でも、だからこそ綺麗なのかな。本物の虹よりもずっと」


2009/04/01 よろず

50のお題「色は匂えど」04/50

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