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ポリーニとブーレーズの競演、速報(どこが?)〈前編〉 
 昨秋、東京で1ヶ月、9度にわたって開かれた「ポリーニ・プロジェクト 2002」のコンサートに、一地方に住まう私は一度も足を運べなかった。一連のコンサートのうち、11月22日のショパン&ドビュッシー・プログラムはすでにNHK教育で放送されている('02/12/01)。もちろんテープは回したが、録画されたものはえてして一度も再生されないままライブラリィに埋もれてしまう。じっさい私は上記を再生しないうちに年を越し、そればかりか年末の大掃除の最中、テープの行方を見失っていた。
 そんななか、同じチャンネルで今夜(22:00〜23:35)、同じプロジェクトの別プログラム(プロジェクトの冒頭を飾る10月21日のブーレーズ/ロンドン響との競演)の放送があるのを知るにおよんで、私は、せめて放送にリアルタイムにつきあって見/聴き、それを速報することとした。(何がエライのだ? どこが速報なのだ?)
 ソリストの登場に先んじて演奏されたブーレーズ自作の《弦楽のための本》――NHKは番組表では《弦楽合奏のための書》と表記しているがマラルメを踏まえているのだから「本」と訳すべきだろう/当日のプログラムはどうなっていたのだろう?――は、演奏家に極度の緊張を強いる作品とこれまでは見えたが(VPOのザルツブルク祭の演奏風景がDVDで見られる)、さすがロンドン響、颯爽と弾き、すでにこれが古典の部類に属している(作曲家の死後も他の指揮者で演奏されるかどうか怪しいが[笑])ことを、私に実感させた。
 ついで、ストラヴィンスキー《火の鳥》より先に置かれているとはいえこの日のメインというべき、バルトークのP協第1番。これまで実演風景(録画映像も含めて)に接したことのない、CDでのみ聴いてきた(めったに聴かないヨ[笑])作品だが、ピアニストにとってはもちろん指揮者そして伴奏オケにとっても異様に難しい曲であることが音で、映像で看取できた(どんな場面でもけっして乱れないブーレーズ)。そして単純にいって、何と美しい曲であることか(とくに第1楽章)! このバルトークを、そしてシェーンベルクとヴェーベルンを、ヒンデミットやコダーイを、それらを有した20世紀は、もうそれだけで18世紀に、音楽的に肩を並べる。(J・ケージさん、さようなら。)
 ピアニストが舞台から降り、客席に座って聴く、ストラヴィンスキー。ブーレーズの端正な指揮ぶりはここでも同様だが、私にはロンドン響の上手さが印象的に映った。音楽評にかんしてかなり信頼をおいている許光俊氏などでも、ロンドンのオケをウィーンやベルリンのそれより一段低いところにおいているが(じっさい彼は凡庸を覚悟で地域差を語っている)、作品の即物的な理解(それが可能であるならば)には、BPOはさておきVPOの美しい(だけに聴こえることがある)演奏はかえってマイナス、ロンドンっ子(ばかりとは思えないが)のシャキシャキした演奏のほうがふさわしいのではないか。
 ――と、ポリーニでもブーレーズでもない「彼(女)ら」のことを思い、そして書くとき、私は、わがシュタルケル(チェロ)が1960年代にマーキュリー・レーベルに残した協奏曲の名演・名盤のいくつかが同じオケを伴奏に得ていた事実を、きっと踏まえ、その子どもたちに敬意を表している。
   *
[一度投稿したが字数オーヴァーで拒否されたので、ここで前後編を分ける。]
モダニスト 2003/01/06月00:30 [191]




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