無題

次の日リビングで琴子がお袋と話しているのを横目で確認しながら俺は本の読んでいた。
正確にいうとじっさいのとこ読んでいなかったから本をみつめていただけなんだが。
ピーンポーンとドアのチャイムが鳴り琴子が玄関にでていった。
暫くしてペタペタとスリッパの音をさせ琴子がリビングに走ってはいってきた。
「いっ入江くんっ。」
「なんだよ。今日は久々の非番なんだから静かに本読ましてくれよ。」
「こっこれ…・」
琴子はブルーの箱と大きな白い箱をか抱えていた。
「この配達された箱送り主が入江くんであて先があたしになっているんだけど」
俺は少し微笑んで本をおいた。
「そうだけど。どうしたの?」
「えっ…入江くんがあたしに送ったの?」
「そうだ。それくらいわからないか?」
琴子は非常に当惑していた。
「なんだよ。いらないのかよ。じゃあ返せ。」
俺は笑って琴子から箱をとろうとした。
「えっ。これ入江くんのプレゼント?」
「さっきからそうだっていってるだろ。ばかじゃないからわからるだろ」
(あっばかだったか)
「お兄ちゃんがプレゼント?きゃーめずらしいっ。なになに琴子ちゃんあけてよ。」
うん、といって琴子がおそるおそるあける。
その時俺は柄にもなくドキドキしてしまった。
気に入るだろうか?
琴子が気にいる自信はたっぷりあった。
しかし本人を目の前にしてしまうと消え失せてしまった。
めったにない自信喪失の自分がいることに思わず苦笑する。
(ほんとにお前はすごいよ。俺がこんなに緊張するのはめったにないよ。こんなにドキドキしたのは大学センター試験の発表以来かもしれないな。)
「きゃーすごいっかわいい。入江くんありがとーねぇどうしてこんなのかってくれたの?」
その言葉に俺は安堵する。
「別に。なんとなく。」
「いやぁねぇお兄ちゃん照れちゃって。琴子ちゃんきまってるでしょ?お兄ちゃんは琴子ちゃんのこと愛しているからよ。」
「やっぱりぃ。そうだとおもっていたのよ。」
「若いっていいわねぇ。私もパパにプレゼントしてもらおうかしら。さっおにいちゃんここで熱いチュ−をしてもいいわよ」
「おいママなんてこというんだ」
親父がいった。
…なんでこいつらはこんなに懲りないんだ。
俺は琴子を愛しているそれは認めよう。
でもなんで俺がちゅ…・・キスをしなくてはならないいんだ。
ばかばかしい。
「・・……もう寝るっ。」
「あっ。お兄ちゃん。じゃあ抱擁でもいのよ〜こういうふうにぎゅっとね。」
……・・。
そういってお袋は裕樹を抱きしめた。
かわいそうなことに裕樹は「やめろ〜!!!」と絶叫していた



しばらくして琴子が寝室に入ってきた。

「入江くん起きてる?」
俺はなぜか答えなかった。
「…寝ているのね。でもびっくりした。入江くんがプレゼントなんか買ってきてくれるんだもん。昔はこう…・なんていうのかなぁ。絶対プレゼントなんか買ってくれるタイプじゃなかったもんね。」
俺は急に起き上がった。
そして琴子を引き寄せたかとおもうと抱きしめた。強引に。
琴子と俺の顔の距離は僅か10センチ。
「ひゃあ入江くん起きてたの?」
「俺がプレゼントかったら悪いか?」
俺は真っ赤になっている琴子の大きな瞳を見つめた。
琴子はその視線に耐え切れないかのようにすぐに視線をそむける。
「だって…だって…」
本当にコイツは分かっているのだろうか。
こういういじらしいしぐさが男心をくすぐることを
計算なのか本当に何も考えずに言っているのだろうか…。
琴子のことだ。おそらく後者であろう。
「たまにはいいだろう。俺だって男だ。好きな女を喜ばしたい。当然だろう」
ますます赤くなる顔を見ると途轍もなく理性が吹き飛びそうになる。
僅か10センチという距離が手伝って。
「入江くんかわったよね。」
琴子の紺の水玉のパジャマは上から3つボタンが外れて薄いピンクのランジェリーが見え隠れする。
琴子はいつも自分の体を色気がないと下卑ていたが俺はそうは思わなかった。
白くさわると弾力性のあるプリンのようで気持ちのよい肌。
今にも消えてしまいそうな細い細い後れ毛のあるうなじ。
そして俺をいつも安心させてくれる心地よい琴子の匂い。
「誰かさんのせいだよ」
そう一言いうと俺は琴子にそっと口づけをする。
まるで腫れ物に触るかのように。
「でもありがとう。うれしい。入江くんがプレゼントしてくれるなんて。竜の目にも涙よね。」
今にも吹き出しそうなのを必死で堪え、冷静な表情を無理やりよそおい訂正する。
「おい。鬼の目にも涙だろう。それに俺は鬼か?」
ペロリとイチゴのような真っ赤な下をだすと俺の手をとり絡めてきた。
「ううん。いつもクールな入江くんがそんなことするからびっくりしたことを表現したのよ。」
俺の指を一本一本触りながらしゃべる。今まで数えることができないぐらい触れあっているはずだが、一本一本触れられるごとにますます琴子を思う気持ちが溢れ出すのがきた。
結婚した当初より琴子を好きな気持ちがますます高ぶっているのは分かっていた。今日プレゼントを買ったのもその現れだった。
日に日に感じることは俺は琴子なくしてはもう生きていけないこと。
今琴子が俺を思う気持ちと俺の気持ちを天秤にかけてみたらどうなるだろうか。
明白だ。
釣り合うか、もしくは俺の方が・・。
「入江くんどうしたの?」
顔をすこし傾け琴子が羽の生えた魚を見るような不思議そうな顔を向ける。
「ごめん怒った?鬼なんていうから…」
目をぱちぱちさせて俺を見た。
もう一度きつくを抱きしめる。
琴子の体温が直に伝わり、自分の心も体も温めてくれるのがわかった。

「お前は俺にとって最高の幸せを運んできてくれるプレゼントだ…。」




FIN
杏子
2003年03月29日(土) 10時06分20秒 公開
■この作品の著作権は杏子さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今日はこれを書きながら「レベッカ」っていうかなり古いアーティストの曲を聞いてました。懐かしいっ!!!
「レベッカ」しってますか?あっでも最近(と言っても2,3年前)ドラマ『リップステック』でリバイバルされていたなぁ。


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aBaFOmmZSX gdiqvf ■2014年08月13日(水) 17時48分16秒
おつかれさまです!!入江君相変わらずカッコ良かったです!!きゃぁー!!レベッカしってますよぉー!!私はフレンズが好きです♪ ミホ ■2003年03月30日(日) 10時52分59秒
ラブラブな二人が見れて良かったです♪入江君の最後の言葉もよかったです☆ ほのか ■2003年03月29日(土) 23時48分51秒
イイお話でしたぁ〜vvまた次の作品も楽しみに待ってます★ MANA ■2003年03月29日(土) 12時43分25秒
入江くん!!!!カッコ良すぎっ!こんなに琴子がうらやましいと思ったのは久振りですぅ・・・完全ノックアウト状態です///とにかく!!お疲れ様でしたvこれからも頑張ってください♪ aiko ■2003年03月29日(土) 10時20分00秒
ごめんなさい。これhappy happy happyの3です。ごめんなさ〜い。 杏子 ■2003年03月29日(土) 10時08分31秒
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